坐骨神経痛で用いられるリリカとは?薬に隠れた臨床試験からの真実
「現在、坐骨神経痛を患っていて整形外科に通院中。リリカという薬を処方されているけどあまり効果が見られない」
「坐骨神経痛に用いる薬は効果があるのか知りたい」
このブログではこのような悩みを抱えているあなたに向けて記事を書きました。
坐骨神経痛の治療薬に用いるリリカとは?
多くの整形外科では坐骨神経痛に対して「リリカ」と呼ばれる鎮痛薬を処方していますが、実は市販薬でも購入することが出来ます。一般名では「プレガバリン」といい、「ファイザー製薬会社」から製造販売されています。
しかし、本来リリカ(プレガバリン)の適応症は「神経障害性疼痛」になっていて坐骨神経痛も当てはまっているように見えますが、実は「線維筋痛症」「帯状疱疹後の神経痛」「脊髄損傷後の疼痛」「糖尿病の合併症で起こる神経障害に伴う疼痛」のみです。では何故坐骨神経痛の治療薬でリリカを使用するのでしょうか?
坐骨神経痛の推奨薬
坐骨神経痛に対して日本腰痛学会/日本整形外科学会監修の『腰痛診療ガイドライン2019(改定第2版)』で推奨されている薬は以下の3種類になります。
- 非ステロイド性抗炎症薬
- Caチャネルα2δリガンド
- セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
この3つを詳しく説明していきます。
非ステロイド性抗炎症薬
非ステロイド性抗炎症薬は、痛み、発熱、炎症の治療薬として用いられます。
- 抗炎症作用
- 鎮痛作用
- 解熱作用
表記によってはNSAIDやNSAIDsと記されていることもあり、商品名で言うと「ロキソニン」や「バファリン」「ボルタレン」といったものが含まれます。
坐骨神経痛の中でも最も推奨されていて科学的根拠のレベルはA~D評価のBに値します。
Caチャネルα2δリガンド
末梢神経が原因となった痛みに対して効果があると言われていて、神経の亢進を抑えてくれる作用があります。商品名で言うと「タリージェ錠」や「リリカ」が含まれますが、坐骨神経痛の中で有効とされている推奨薬でも4段階の内のDに値し一番低い科学的根拠となっています。
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
脳内の神経伝達を改善させるための薬で抗うつ剤としても使用されています。特に坐骨神経痛の場合では「サインバルタ」という慢性腰痛や変形性関節症、糖尿病性神経障害でも使用する場合もあります。
坐骨神経痛の中で有効とされている推奨薬でも4段階の内のCに値しています。
つまりこれらを見てわかる通り、リリカの推奨度は一番低い値を示していることが分かると思います。では何故坐骨神経痛にリリカが使われるようになったのか?
坐骨神経痛の鎮痛薬にリリカが使われるようになった経緯
The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINEに掲載された「痛みに対するガバペンチンとプレガバリン—処方の増加は懸念の原因ですか?」では、このように記されています。
2004年帯状疱疹後の神経痛、糖尿病性神経障害、2007年に線維筋痛症の治療薬としてリリカが承認されました。しかし一部の臨床医によって繊維筋痛症の兆候を暗黙視し、似ているような痛みや腰痛、変形性関節症の場合にも適応内ではないものの正当化する場面があるそうです。
つまり「神経障害性疼痛」は広い範囲の事を指しているので坐骨神経痛にも使えるという確信から広がったのではないでしょうか?
坐骨神経痛にリリカは効果がない?
The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINEに掲載された「急性および慢性坐骨神経痛に対するプレガバリンの試験」では以下のような研究がされました。
背景
坐骨神経痛は医学的治療をする為の証拠は十分ではありません。プレガバリンは、ある種類の神経障害性疼痛には有効的という事がわかっていますが、プレガバリンが直接坐骨神経痛の症状を低下させることが出来るのか調べた。
方法
坐骨神経痛がある患者を対象に、プレガバリンを使用するグループとプラセボを使用(有効成分を含まない薬)する対照試験を実施した。プレガバリンを最長8週間、150mg/日の用量から始め、最終的には600mg/日まで調整しぷらぜぼうぉ投与するグループにランダムに振り分けた。
主な結果は、10点スケール(0は痛みがない、10は最悪の痛みを示す)で8週目の時点で最大のポイントスケールとした。下肢痛の強度スコアも52週の時点でも評価をした。
副次的な結果は1年に渡る試験機関の障害の程度、腰痛の強さ、生活の質(QOL)などとした。
結果
合計209名をプレガバリン使用108名、プラセボ使用101名に振り分けた。振り分け後にプレガバリン使用の2名の患者は分析から除外された。
8週目に下肢痛のスコアの平均が、プレガバリン使用3.7、プラセボ使用3.1だった。さらに52週目に関してはプレガバリン使用3.4、プラセボ使用3.0でグループ間で明らかな差は見られませんでした。
副作用についてはプレガバリン使用で227件、プラセボ使用で124件報告された。
結論
プレガバリンを使用しても坐骨神経痛が軽減する事は無く、プラセボと比較しても優位な改善は見られなかった。副作用の発症率はプラゼボ使用よりもプレガバリン使用が多かった。つまり坐骨神経痛に対して使用しているリリカに対しては「プラセボ効果と同等の鎮痛効果」と言っているのです。
まとめ
坐骨神経痛に対して多くの方が「リリカ」を使用していると思われます。実際に坐骨神経痛を抱えて当院に来られた患者さんのほとんどの方が処方されています。
薬は用量を守って使用すればほとんどの場合は副作用は少ないです。しかし今回説明した試験では「プラセボ」と呼ばれる治療効果の無い薬を使用して効果の差が無いことが分かっているので、坐骨神経痛には向かない薬と言えるのではないでしょうか?
薬に万能な物など存在しないので、使用目的をハッキリさせて服用することが一番重要です。